片頭痛の新しい治療「予防療法」

日本人の3人に1人は「頭痛もち」で3,000万人以上が悩んでいます。今回は予防療法が有効な片頭痛について。片頭痛患者は、840万人いると推定され、その74%の人が生活に支障を感じ、寝込んでしまうことも。一方では片頭痛に対する認識は低く、医療機関を受診している人は全体の30%にすぎません。
片頭痛は、20~40代の女性に多く、心身のストレスから解放された仕事のない週末に起こりやすく、脳の血管が急激に拡張して痛みます。寝過ぎ・寝不足・女性ホルモンの変動・空腹・疲労・光や音の強い刺激も誘引になります。赤ワインやチョコレート、チーズの取りすぎも片頭痛を誘発すると言われています。片頭痛の症状は、4~72時間続き、片側のこめかみから目のあたりがズキンズキンと拍動性の頭痛が特徴です。実際には4割近くの人が両側性の頭痛を経験しています。日常生活に支障を来たし、階段の昇降など日常的な動作でも頭痛は増強し、吐き気や嘔吐も伴うことが多く、頭痛発作中は光、音を不快と感じる人が多いようです。片頭痛は(1)前兆がある片頭痛(30%)と、(2)前兆のない片頭痛(70%)に分かれます。前兆は、頭痛の前に起こる症状で、キラキラした光、ギザギザの光(閃輝暗点と言います)といった視覚性の症状が多く見られます。その他半身の脱力、感覚障害(しびれ)言語障害などの前兆もあります。通常は60分以内に前兆は終わり、その後頭痛が始まります。
片頭痛の薬物治療にあたっては、まず生命の危険がある頭痛を除外する必要があります。薬物治療には、(1)片頭痛発作が起きた時に行う急性期治療と、(2)起きる前に行う予防療法があります。急性期治療でもっとも効果的な薬はトリプタン製剤で、多くの患者さんが恩恵を受けています。軽い場合は市販薬も含め鎮痛剤が使われます。薬の上手な使い方は、頭痛発作のなるべく早期に服用すること、過度に連用しないことです。使用量の目安は、1か月に10日以内が望ましいとされ、それ以上になると薬剤乱用頭痛が報告されています。
予防療法は、発作の発生を抑え、発作の回数や強さを減らし、薬の飲み過ぎを抑え、積極的に頭痛をコントロールする新しい治療法です。その結果、鎮痛剤やトリプタンが効くようになり、症状の重い患者さんほど大きな改善が見られることも特徴です。
具体的には、(1)月に2回以上頭痛発作が起きる場合、(2)トリプタン製剤が効かない場合(症状が重く、日常生活に支障をきたす)、(3)10日以上薬を飲む場合(服薬が過剰)に最も適した治療法です。ただ予防薬は効果を感じるまで時間がかかり、最低でも3か月程度服用する必要があります。治療期間は3~6か月で、発作が月1~2回以下に減ると徐々に減らし、可能であれば中止します。またトリプタンは1錠1,000円(3割負担で300円)しますが、予防薬は数10円程度でとてもリーゾナブルです。高価なトリプタン製剤を減らすためにも効果的です。
(マイタウン H.30年4月1日号掲載)

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